社長名義の土地を会社が使っている場合、相続で何が起こる?

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土地と会社は別々に相続される

会社の本社や工場が建っている土地を、会社ではなく社長個人が持っているケースがあります。

経営している間は、社長が土地の所有者であり、会社の経営者でもあるため、
大きな問題を感じないかもしれません。

しかし、社長が亡くなると状況が変わります。

会社の株式は株式として相続され、土地は社長個人の不動産として相続されます。

つまり、会社を引き継ぐ人と、会社が使っている土地を引き継ぐ人が
別になる可能性があります。

ここが、社長名義の土地を会社が使っている場合の大きな注意点です。

相続後も会社が同じ場所で事業を続けるのであれば、
誰が土地を取得するのかは単なる財産分けではありません。

会社の経営を安定させるための重要な判断になります。


まず土地の名義を確認する

最初に確認したいのは、会社が使っている土地の所有者です。

本社や工場を何十年も同じ場所で使っていると、
土地も会社名義だと思い込んでいる家族や後継者もいます。

しかし、登記を確認すると土地は社長個人、建物は会社というケースがあります。

土地と建物の両方が社長個人名義で、会社が借りている場合もあります。

相続で問題になりやすいのは、
会社の事業に欠かせない不動産が社長個人の財産に含まれている場合です。

自宅や投資用マンションとは違い、
その土地の相続先によって会社の経営まで左右されます。

そのため、相続財産を整理するときは、不動産の金額だけではなく、
会社がその土地を何のために使っているのかまで把握しておく必要があります。


後継者と土地の相続人が違うとどうなる?

具体的なケースで考えてみます。

父親が会社の株式を100%所有し、長男が後継者として会社を継ぐ予定です。

父親の相続財産は、会社が工場として使用している土地6,000万円、
自社株4,000万円、預金2,000万円の合計1億2,000万円とします。

相続人は長男と長女の2人です。

金額だけを基準に半分ずつ分けようとすると、長女が6,000万円の土地を取得し、
長男が4,000万円の自社株と2,000万円の預金を取得する方法が考えられます。

それぞれ6,000万円なので、数字の上では均等です。

しかし、この分け方には問題があります。

長男は会社を所有して経営する一方、
会社が事業を続けるために必要な工場用地は長女の所有になります。

その結果、相続後の会社は長女から土地を借りながら事業を続ける形になります。

兄妹の関係が良好な間は問題が表面化しないかもしれません。

しかし、土地の賃料を変更したい、土地を売りたい、
長女にも相続が発生したといった場面では、新たな調整が必要になります。

財産額を均等にした結果、会社の経営に必要な土地と経営権が分かれてしまう。

社長の相続では、このような分け方を避ける視点が必要です。


土地を相続した人が会社の大家になる

社長が会社から地代を受け取って土地を貸していた場合、社長が亡くなったからといって、
会社が直ちに土地を使えなくなるわけではありません。

賃貸関係が続いていれば、土地を相続した人が貸主側の立場を引き継ぐのが基本です。

先ほどの例で長女が工場用地を相続すれば、
会社と長女の間に土地を貸す側と借りる側の関係が生まれます。

つまり、長男は社長として会社を経営しながら、
姉が所有する土地で工場を動かすことになります。

問題は、現在の家賃だけではありません。

会社が工場を建て替えるときにどうするのか
、土地の一部を売却するときに誰が決めるのか、
将来その土地を誰が相続するのかまで考えなければなりません。

会社がその場所から簡単に移転できないのであれば、
土地の所有者が誰になるのかは経営上の重要事項です。


契約書がない会社は要注意

社長と自分の会社との取引では、土地の利用条件を曖昧なままにしているケースがあります。

毎月会社から社長へ地代を払っているものの、契約書を作っていない。

会社が土地を使っているが、地代は一切払っていない。

契約書はあるものの、何十年も前に作ったまま内容を確認していない。

この状態で相続が発生すると、後継者は土地の利用条件を一から確認しなければなりません。

特に、会社を継がない相続人が土地を取得すると、
今まで家族内では問題にならなかった条件が重要になります。

毎月いくら払う契約なのか、契約期間はいつまでなのか、建物を建て替えてよいのか、
将来土地を返すときはどうするのかを整理する必要があります。

社長と会社が実質的に一体だった時期には問題にならなくても、
相続後は所有者と会社の利害が一致するとは限りません。

契約内容を確認する目的は形式を整えることではなく、
社長がいなくなった後も会社が同じ土地を使い続けられる状態を作ることです。


地代の有無で相続税も変わる

会社が社長の土地を使っている場合は、地代を払っているかどうかも確認が必要です。

会社が無償で土地を使っている場合と、一定の地代を支払って借りている場合では、
相続税を計算するときの土地の扱いが同じとは限りません。

無償で使用させている土地では、
原則として会社が使っているという理由だけで土地の評価が下がるわけではなく、
所有者自身が自由に使える土地と同様の金額で評価する扱いがあります。

一方、土地の上に会社の建物があり、賃貸借として会社に貸している場合には、
その契約関係によって土地の評価方法も変わります。

したがって、会社が使っているという事実だけで相続税を予想するのは適切ではありません。

土地の登記に加えて、会社が地代を払っているか、契約書があるか、
会社と社長の間で土地をどのような条件で使用しているかまで確認する必要があります。


条件次第では土地の評価を大きく下げられる

社長が自分の会社へ土地を貸し、その土地を本社や工場などとして使っている場合、
一定の条件を満たせば、相続税を計算するときに土地の評価を大きく減らせる制度があります。

対象となる土地は最大400平方メートルまでで、
条件を満たす部分について80%の減額が可能です。

例えば、対象となる土地の評価額が6,000万円で、
その全体が条件を満たす範囲内だったとします。

80%減額できれば、相続税を計算する際に対象となる金額は1,200万円になります。

6,000万円 × 20% = 1,200万円です。

4,800万円も評価額が下がるため、適用できるかどうかで相続税は大きく変わります。

ただし、自分の会社が土地を使っているというだけで適用されるものではありません。

亡くなる直前の会社との関係、土地の貸し方、会社の株式を誰が持っているか、
土地を誰が相続するか、相続後も会社が事業を続けるかなど、いくつかの条件があります。

土地を取得する親族についても、相続税の申告期限時点でその会社の役員であり、
土地を申告期限まで保有するなどの要件があります。

そのため、相続が発生してから土地の取得者を決める際には、
単純な財産額だけでなく、この制度を利用できる人が誰なのかも確認する必要があります。


無料で貸しているなら取り扱いが変わる

先ほどの80%減額を考える際には、会社が土地をどのような条件で使っているかが重要です。

社長が自分の会社だからという理由で、
長年地代を一切受け取らずに土地を使わせているケースがあります。

この場合、会社がその場所で事業をしているからといって、
有償で貸している場合と同じように80%の減額を受けられるとは限りません。

会社へ貸している事業用の土地としてこの減額を受けるには、
土地などが相当の対価で継続的に貸し付けられていることが前提になるためです。

つまり、相続対策を考える段階では、会社が使っているかどうかだけでは情報が足りません。

会社から社長へ毎月いくら地代を払っているのか、
その金額がどのように決められているのか、
契約書がどうなっているのかまで整理する必要があります。


土地と株をセットで検討

社長名義の土地を会社が使っている場合、
相続では土地と自社株を別々に考えない方がよいでしょう。

会社を継ぐ後継者が自社株を取得して経営権を持っても、
事業に必要な土地を別の相続人が取得すれば、
後継者だけでは会社の重要な判断を完結できなくなるからです。

特に、本社や工場のように移転が難しい土地では、この影響が大きくなります。

一方で、後継者へ株も土地も集めれば、それだけ多くの財産を後継者へ渡すことになります。

他の相続人との財産配分をどうするかという問題が残ります。

そのため、先ほどのケースで長男へ土地6,000万円と自社株4,000万円を渡すのであれば、
長男の取得額は1億円になります。

長女へ渡せる預金は2,000万円しかありません。

会社経営だけを考えれば土地と株を長男に集めたい一方、
相続財産の配分には8,000万円の差が生じます。

このケースで必要なのは、土地を誰に渡すかだけを決めることではありません。

生前から個人財産を増やす、生命保険などで会社を継がない子へ渡せるお金を準備する、
土地を会社へ移すことが適切か検討するなど、
後継者へ事業資産を集めても他の相続人との調整ができる状態を作ることが課題になります。


会社に土地を売れば解決する?

土地と株の所有者を分けたくないのであれば、
生前に社長個人の土地を会社へ売却する方法も考えられます。

会社が土地を所有すれば、
社長が亡くなった後にその土地自体を家族が相続する問題はなくなります。

ただし、これで解決とはいきません。

会社は土地を購入する資金を準備する必要があります。

社長側では土地を売ったことによる税金が発生する可能性があります。

さらに、会社が土地を取得すれば、その不動産は会社の財産になるため、
自社株の価値にも影響します。

つまり、個人から会社へ名義を移せば相続財産が単純に消えるわけではありません。

この選択肢を検討するときは、土地を個人で持ち続けた場合と、
会社へ売却した場合について、社長個人の税金、会社の資金、
自社株、将来の経営をまとめて比較する必要があります。


相続前に確認する5項目

社長個人の土地を会社が使っているなら、
相続が起こる前に次の5点を整理しておくと判断しやすくなります。

1.土地と建物の所有者を登記で確認。

2.会社と社長の間に賃貸借契約があるかを確認。

3.会社が実際にいくら地代を払っているか。

4.社長が亡くなった場合に土地と自社株を誰へ渡す予定なのか。

5.後継者が土地を取得した場合に利用できる相続税の減額がないかを確認。

この5項目を整理すれば、土地の相続が会社経営へ与える影響と、
相続税への影響を切り分けて検討できます。

特に重要なのは、土地の相続先を最後に決めないことです。

会社に欠かせない土地であれば、自社株を誰へ渡すかを決める段階で、
土地の承継先も一緒に決める必要があります。


まとめ

社長名義の土地を会社が使っている場合、
社長が亡くれても土地が自動的に会社のものになるわけではありません。

土地は社長個人の相続財産として、相続人へ引き継がれます。

そのため、会社を継ぐ人と土地を相続する人が別になる可能性があります。

この状態でも会社が直ちに事業を続けられなくなるわけではありませんが、
土地の賃料、建て替え、売却、次の相続など、
将来の重要な判断で土地所有者との調整が必要になります。

会社にとって欠かせない本社や工場の土地であれば、
金額だけを基準に相続人へ分けるのは避けたいところです。

一方、後継者へ土地と株を集中させれば、
会社を継がない相続人へ渡す財産が不足する問題が生じます。

だからこそ、生前に確認したいのは土地の評価額だけではありません。

誰が土地を所有し、誰が会社を経営し、その二つを相続後も同じ方向へ動かせるのか。

ここまで決めて初めて、社長名義の事業用土地について相続の準備ができていると言えます。

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