相続した不動産を売って相続税を払うときの注意点

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「不動産を売れば払える」と考える前に確認したいこと

相続財産の中に不動産が多く、預金が少ない場合、

「家や土地を売って、そのお金で相続税を払えばいい。」

と考える方もいるのではないでしょうか。

確かに、不動産を売却して納税資金を作ることは一つの方法です。

しかし、不動産は預金のように、
必要になったときすぐ現金へ変えられる財産ではありません。

買い手を探し、価格を交渉し、契約を行い、
実際に代金を受け取るまでには時間がかかります。

さらに、5,000万円で売れたからといって、
5,000万円すべてを相続税へ使えるわけでもありません。

仲介手数料や測量、建物の取り壊しなどにお金がかかることがあります。

売却によって利益が出れば、
相続税とは別に税金が発生する場合もあります。

相続税の申告と納付には原則として10か月という期限があるため、
不動産を売って納税するつもりなら、
相続が始まってからすぐに準備を始める必要があります。


「価値がある」こと≠「すぐ使える」こと

例えば、父親が亡くなり、次の財産を残したとします。

自宅と土地が6,000万円。

賃貸不動産が4,000万円。

預金が1,000万円。

財産全体では1億1,000万円あります。

金額だけを見ると、多くの財産を相続したように見えます。

しかし、相続税を払うためにすぐ使えるのは、
基本的には1,000万円の預金です。

不動産には合計1億円の価値があっても、
そのまま税金の支払いには使えません。

そこで、

「賃貸不動産を売ろう。」

という話になります。

ここで問題になるのが、売却までに必要な時間です。

不動産会社へ相談し、売却価格を決め、買い手を探します。

土地の境界が分からなければ、測量が必要になることもあります。

建物が古ければ、買い手から取り壊しを求められるかもしれません。

家の中に家具や荷物が残っていれば、処分にも時間と費用がかかります。

相続税の支払期限から逆算すると、

「期限の少し前になったら売ればよい。」

では間に合わない可能性があります。

不動産を納税資金にするつもりなら、相続税の金額が確定するのを待たず、
売却できそうな財産を早い段階から確認しておくことが重要です。


売却価格と手元に残る金額は同じではない

不動産を5,000万円で売却できた場合、

「5,000万円あれば相続税を払える。」

と考えたくなる気持ちはわかります。

しかし、実際に手元へ残るお金はそれより少なくなります。

仲介手数料、測量費用、

建物の解体費用、家の中の荷物の処分費用、

売買契約書などの作成費用、借入金が残っている不動産なら借入の返済、

さらに、不動産を売って利益が出れば、その利益に対する税金も考えなければなりません。

例えば5,000万円で売却できても、売却までに500万円の費用がかかり、
借入金の返済が1,000万円必要なら、この時点で自由に使えるお金は3,500万円です。

さらに売却による税金が発生すれば、最終的な手取りはもっと少なくなります。

納税計画を作るときは、

「いくらで売れるか」ではなく、「売った後にいくら残るか」

を見る必要があります。


相続時の金額を基に売却の利益を計算できない

相続した不動産を売るときに、特に勘違いしやすい点があります。

例えば、相続税を計算するときに土地を3,000万円として申告し、
その土地を5,000万円で売却したとします。

この場合、

「5,000万円から3,000万円を引いた2,000万円が利益になる。」

とは限りません。

売却したときの利益を計算する際は、
原則として亡くなった方がその土地や建物を購入したとき
金額などを引き継いで計算します。

例えば、父親が昔1,500万円で買った土地を、
子どもが相続して5,000万円で売却した場合を考えてみます。

相続税の計算では3,000万円だったとしても、
売却時の計算では父親が購入したときの1,500万円が重要になります。

そのため、

「相続税の計算ではそれほど高くなかったのに、売却すると大きな利益が出た。」

ということがあります。

相続税だけを計算して、

「この不動産を売れば十分なお金が残る。」

と考えると、思ったよりも手元に残る金額は少なくなります。


昔いくらで買ったのか分からないと負担が大きくなることがある

親が何十年も前に購入した土地や建物では、

「いくらで買ったのか分からない。」

というケースも少なくありません。

・売買契約書が見つからない

・購入した不動産会社も分からない

・当時の通帳も残っていない

このような場合です。

購入金額が分からないと、
売却価格の5%を購入金額として計算する方法を使うことがあります。

例えば、5,000万円で土地を売った場合、その5%は250万円です。

実際には父親が2,000万円で購入していたとしても、
その事実を確認できなければ、利益が大きく計算される可能性があります。

だからこそ、不動産を相続した時点で、

「この土地はいくらで購入したのか。」

を確認しておく意味があります。

購入時の売買契約書や領収書が自宅に残っていないか探します。

金融機関の資料や過去の申告書などから確認できる場合もあります。

不動産を売る直前になって初めて探すより、
相続財産を整理するときに一緒に確認しておく方が進めやすくなります。


相続税を払った人が早めに売ると、売却時の税負担を抑えられる場合がある

相続した不動産について相続税を負担し、
その後一定期間内にその不動産を売却した場合、
支払った相続税の一部を、売却利益を計算するときに差し引ける場合があります。

平たく言うと、

「相続するときにも税金を払い、その不動産を売ったときにも利益が出た。」

という場合に、負担が重くなり過ぎないよう調整できる仕組みです。

ただし、いつ売っても利用できるわけではありません。

一定の期間内に売却する必要があります。

そのため、相続した不動産をいずれ売却する予定なのであれば、

「当面使わないから、何年かそのまま持っておこう。」

と決める前に、売る時期によって税金が変わらないかを確認することが大切です。

いつ売るかによって最終的な手取りが変わる可能性があります。


相続税のために安売りしない

相続税の支払期限が近づくと、

「とにかく早く売らなければ。」

という気持ちになりやすくなります。

しかし、期限が迫っていることを前提に買い手との交渉を進めれば、
価格面で不利になる可能性があります。

本来5,000万円程度で売れる不動産でも、

「来月までに現金が必要です。」

という状況になれば、価格を下げてでも売らざるを得なくなるかもしれません。

500万円値下げして早く売れたとしても、
相続税そのものが500万円減るわけではありません。

税金を払うために、財産そのものの価値を大きく失ってしまうことになります。

不動産を売って納税する予定であれば、

・売却価格の目安

・売却までにかかりそうな期間

・売却に必要な準備

・相続税の支払期限

を早い段階で並べて確認する必要があります。

時間に余裕があれば、複数の不動産会社から価格を聞いたり、
売却条件を比較したりすることもできます。

納税資金不足そのものより、
準備が遅れたことで不利な売却をしなければならなくなることにも注意が必要です。


どの不動産を売るかを「高く売れるもの」基準で決めない

不動産を複数相続した場合、

「一番高く売れる不動産を売ればよい。」

とは限りません。

例えば、自宅、賃貸物件、会社が使っている土地の三つを相続したとします。

会社が使っている土地が最も高値で売れるとしても、
それを第三者へ売れば、会社はその場所を使い続けられなくなる可能性があります。

新しい所有者から土地を借りることになれば、
会社に毎月の賃料負担が発生するかもしれません。

立ち退きを求められれば、会社そのものを移転する必要もあります。

一方、賃貸不動産を売れば、毎月得ていた家賃収入を失います。

自宅を売れば、残された家族が住む場所を考えなければなりません。

不動産を売るかどうかは、

「いくらの現金になるか。」

だけでは判断できません。

その不動産が、

家族の生活に必要なのか。

会社の経営に必要なのか。

今後収入を生む財産なのか。

という役割まで考える必要があります。

特に会社経営者の相続では、
社長個人の不動産と会社の事業がつながっているケースがあるため注意が必要です。


誰が不動産を相続して売るのかも重要

不動産を売って相続税を払う場合には、

「誰がその不動産を相続するのか。」

も先に考える必要があります。

例えば、長男と次男が相続人で、
父親の土地を売却して代金を半分ずつ受け取る予定だったとします。

この場合も、

・最初に誰が土地を取得するのか

・売却代金をどのように分けるのか

・売却にかかる費用を誰が負担するのか

を明確にしておく必要があります。

土地を長男だけが取得した後に売却し、
その売却代金を何となく次男へ渡すという進め方では、
最初に決めた財産の分け方と実際のお金の流れが一致しなくなることがあります。

最初から売却する予定なのであれば、

「売却して、その代金をどのように相続人で分けるのか」

まで含めて決めておく方が分かりやすくなります。

相続税の負担も、誰がどの財産を受け取ったかによって変わります。

売却だけを先に進めるのではなく、財産の分け方とセットで考える必要があります。


売却代金が入る日と相続税を払う日を確認する

不動産売買では、契約した日に売却代金の全額が入るとは限りません。

一般的には、契約時に一部のお金を受け取り、
その後、物件を引き渡す日に残りの代金を受け取ります。

つまり、

「売買契約が決まった。」

ことと、

「相続税を払える現金が手元にある。」

ことは別です。

例えば、相続税の納付期限が10月31日だったとします。

9月に売買契約を結べても、
買い手への引き渡しと残代金の受け取りが11月になるのであれば、
その売却代金を10月末の納税には使えません。

不動産会社から、

「この時期には売れると思います。」

と言われたとしても、
納税計画では実際にお金を受け取れる日を確認する必要があります。

買い手の住宅ローン審査や境界確認などによって、
予定していた日程が遅れることもあります。

相続税を売却代金で払う場合は、

契約予定日ではなく、実際に代金を受け取る予定日から逆算する

ことが重要です。


不動産を売らない方法も比較してから決める

相続税を払う現金が不足しているからといって、
必ず不動産を売らなければならないわけではありません。

まず、

「あといくら現金が足りないのか。」

を確認します。

例えば、相続税が3,000万円で、相続した預金が2,500万円あるなら、
不足するのは500万円です。

この500万円を準備するために、
5,000万円の不動産を急いで売る必要があるのかは考える余地があります。

・生命保険金が入る予定はないか

・他の相続財産に使える現金はないか

・相続人自身の資金で一時的に対応できないか

・相続税を何年かに分けて払う方法を利用できないか

こうした方法を比較したうえで、
それでも不動産売却が必要なのであれば売却を進めます。

重要なのは、

「現金が足りない=不動産を全部売る」

とだけ考えないことです。

不足する金額が分かれば、必要以上に財産を手放さずに済む可能性があります。


社長の相続では会社の将来まで考えて売却する

社長個人が所有する土地や建物を会社が使っているケースは珍しくありません。

本社の土地、工場、店舗、倉庫、駐車場。

これらが社長個人名義になっていることがあります。

社長が亡くなれば、この不動産も相続財産です。

相続税を払うために売却すれば、現金は作れます。

しかし、その土地を会社が使い続けているのであれば、
売却後の会社経営へ影響します。

・第三者へ売った後も借りられるのか

・賃料はいくらになるのか

・会社が買い取ることはできないのか

・別の場所へ移転するとしたらいくら必要なのか

こうした点まで確認しなければなりません。

例えば、相続税1,000万円を払うために会社の工場用地を売却した結果、
毎年数百万円の賃料負担が発生するのであれば、長い目で見た負担は大きくなります。

社長の相続では、

「個人の相続税を払えるか」と「会社を今後も続けられるか」を切り離して考えないこと

が重要です。


まず「納税資金の不足額」を確認

不動産を売るか迷ったときに、最初から売却査定を取る必要はありません。

まず確認したいのは、納税資金が本当にいくら不足しているのかです。

・相続税はいくらになりそうか

・相続した預金はいくらあるか

・生命保険など、相続後に受け取る現金はいくらあるか

・相続人自身が無理なく用意できる金額はいくらか

ここまで確認すれば、不足する金額が見えてきます。

その不足額を基に、

・どの不動産を売るか

・いくらで売れば足りるか

・売却後に残る金額はいくらか

・いつまでに売る必要があるか

を考えます。

順序を逆にして、

「とりあえず不動産を売って現金を作ろう。」

と進めると、本来残せたはずの財産まで手放すことになりかねません。


まとめ

相続した不動産を売って相続税を払うことは、
納税資金を準備する有効な方法の一つです。

ただし、

「不動産の価値」と「相続税に使える現金」は同じではありません。

不動産を売却すると、仲介手数料などの費用が発生します。

借入金が残っていれば返済も必要です。

売却によって利益が出れば、
相続税とは別の税金が発生することもあります。

そのため、売却価格だけを見て納税計画を立てるのではなく、
最終的に手元へ残る金額を確認する必要があります。

さらに、会社経営者の場合は、その不動産を会社が使っていないかにも注意が必要です。

相続税を払うために事業に必要な土地を売却し、
その後の会社経営が苦しくなっては本末転倒です。

最初に確認するべきなのは、

「相続税はいくら不足しているのか。」

という金額です。

不足額が分かった後で、どの財産を売れば会社や家族への影響を小さくできるのかを考える。

そして、不動産を売るのであれば、期限直前ではなく、
価格や条件を比較できる時間を残して動き始める。

この順序で考えることで、
相続税を払うためだけに大切な不動産を不利な条件で手放すことを防ぎやすくなります。

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