申告が終わった後でも、税額を見直せる場合がある
相続税の申告を終え、税金も納めた後になって、
「土地の金額を高く計算し過ぎていたかもしれない。」
「差し引ける借入金を入れていなかった。」
「自社株の計算を見直したら、当初より低い金額になった。」
と気付くことがあります。
一度納めた相続税は、もう取り戻せないと思うかもしれません。
しかし、申告した税額が本来より多かった場合には、
税額を見直し、払い過ぎた分を返してもらえる可能性があります。
原則として、相続税の申告期限から5年以内であれば、
税額を減らしてもらうための手続きができます。
ただし、
「税金が高かったから返してほしい。」
というだけでは認められません。
当初の申告で、財産を実際より高く計算していた、
差し引けるものを入れていなかったなど、
本来の税額より多く納めていた理由が必要です。
相続税は一度申告したら終わりではありません。
申告内容を見直すことで、払い過ぎに気付くケースもあります。
今回は、どのような場合に相続税を取り戻せる可能性があるのか、確認してみましょう。
土地を高く計算していた場合
相続税を払い過ぎる原因として考えられるものの一つが、土地の金額です。
預金であれば、亡くなった日の残高を確認すれば、
基本的には金額が分かります。
しかし、土地は違います。
同じ面積の土地でも、
道路にどのように接しているか。
土地の形は使いやすいか。
高低差があるか。
建物を建てにくい事情がないか。
周辺の状況はどうなっているか。
といった条件によって、
相続税を計算するときの金額が変わることがあります。
例えば、単純な計算だけで3,000万円として申告していた土地を
詳しく確認すると、実際には2,500万円で計算するのが適切だった
という場合があります。
500万円分、相続財産を多く申告していたことになります。
その結果、相続税も本来より多く納めていたのであれば、
税額を見直せる可能性があります。
相続税については、申告額が本来より多かった場合に
減額を求める手続きが認められています。
ただし、土地は、
「もっと安く計算できそう。」
という感覚だけで金額を変えられるものではありません。
なぜ当初の金額より低くなるのかを、
土地の状況や資料から説明できることが重要です。
自社株を高く計算していた場合
会社経営者の相続では、自社株も大きな確認ポイントになります。
中小企業の株式は、
上場会社の株のように市場価格が表示されているわけではありません。
会社の利益や財産、借入金などを基にして価値を計算します。
そのため、計算に使った数字が違っていたり、
会社が持つ財産の金額を適切に反映できていなかったりすると、
自社株の価値そのものが変わることがあります。
例えば、自社株を1億円として相続税を申告した後に計算内容を見直し、
適切な価値が8,000万円だったとします。
2,000万円もの差が出れば、相続税への影響も小さくありません。
特に、社長の財産の中で自社株が大きな割合を占めている場合は、
一つの計算違いが相続税全体へ大きく影響します。
相続税の申告書だけを見直すのではなく、
当時どのように自社株の価値を計算したのかまで確認することで、
払い過ぎが見つかる場合があります。
差し引ける借入金などを入れていなかった場合
相続税は、亡くなった方が持っていた財産を
そのまま合計して計算するわけではありません。
亡くなった方に返済していない借入金などがあれば、
一定のものは財産から差し引いて計算できます。
例えば、
預金が5,000万円。
不動産が5,000万円。
合計1億円の財産があったとします。
一方で、亡くなった方に1,000万円の借入金が残っていたのであれば、
その内容を確認したうえで相続税の計算へ反映します。
ところが、家族が借入金の存在を知らず、
1億円の財産だけで相続税を申告してしまうことがあります。
申告後に金融機関の書類が見つかり、
「亡くなった時点でまだ借入金が残っていた。」
と分かれば、最初の計算を見直す必要があります。
また、亡くなった方がまだ支払っていなかった一定の費用などが
後から判明するケースもあります。
新しい財産が見つかると税金が増えることがありますが、
反対に、後から差し引けるものが見つかり、税金が減ることもあるということです。
財産を二重に計算していないか
相続財産を調べていると、同じ財産を二重に計算してしまうこともあります。
例えば、亡くなる直前にA銀行からB銀行へ1,000万円を移していたとします。
A銀行の古い資料に1,000万円。
B銀行の残高にも1,000万円。
確認する時期を間違えると、
同じ1,000万円を二つの預金として計算してしまう可能性があります。
また、有価証券を売却して預金へ移していたにもかかわらず、
売却前の有価証券と売却後の預金を両方財産として計算してしまうケースも考えられます。
相続税で重要なのは、亡くなった時点でどの財産が存在していたのかです。
資料の枚数が多いほど、
「このお金は別の財産なのか。」
「同じお金が移動しただけなのか。」
が分かりにくくなります。
申告した財産一覧と銀行口座の取引を改めて確認することで、
同じ財産を重ねて申告していたことに気付く場合があります。
財産の分け方が後から決まって税金が下がる場合もある
相続税の申告期限までに、家族の間で財産の分け方が決まらないこともあります。
しかし、財産の分け方が決まっていなくても、
相続税の申告期限そのものが延びるわけではありません。
そのため、いったん決められた方法で税額を計算して申告し、
後から家族で正式に財産の分け方を決めることがあります。
その結果、当初の申告より相続税が少なくなる場合には、
一定の条件のもとで払い過ぎた税金を見直せることがあります。
例えば、最初の申告時点では自宅を誰が受け取るか決まっていなかったものの、
その後、配偶者が取得することになったとします。
実際の分け方が決まったことで、利用できる税負担の軽減が変わり、
最終的な相続税が下がることがあります。
この場合は通常の5年間という期限とは別に、
財産の分け方が決まったことを知った日の翌日から4か月以内に
手続きが必要になるケースがあります。
財産の分け方が申告後に決まった場合は、そのままにせず、
最初の相続税と比べて税額が変わらないか確認することが重要です。
「相続税が高かった」だけでは返ってこない
相続税を1,000万円払った後に、
「思ったより高かった。」
「もっと節税できたのではないか。」
と思ったとしても、それだけで税金を返してもらえるわけではありません。
必要なのは、
当初の申告税額が、本来納めるべき税額より多かったことを示すことです。
例えば、
土地を高く計算していた。
自社株の計算に誤りがあった。
差し引ける借入金を入れていなかった。
同じ財産を二重に計算していた。
といった理由です。
一方、
「相続後に不動産価格が下がった。」
という理由だけで、死亡時点の相続税まで下がるわけではありません。
相続税は、原則として亡くなった時点の財産を基に計算します。
後から価値が下がったという事情と、
最初から高く計算し過ぎていたことは別の問題です。
払い過ぎかどうかを判断するときは、
「今の価値はいくらか。」
ではなく、
「亡くなった時点で、本来いくらとして計算すべきだったのか」
を確認する必要があります。
申告を税理士に頼んでいても見直す意味はある
相続税の申告を税理士へ依頼していた場合、
「専門家が計算したのだから、絶対に払い過ぎはないだろう。」
と思うかもしれません。
もちろん、適切に資料が揃い、正しく計算されていれば問題ありません。
ただし、税理士が知らなかった事実が後から判明することはあります。
例えば、家族から渡された資料では分からなかった
借入金が後から見つかる。
土地の利用状況について、申告後に新しい事実が分かる。
会社の資料を確認したところ、自社株の計算に使う数字が違っていた。
こうしたケースでは、
最初の申告を担当した税理士が適切に処理していたとしても、
前提となる情報が変わります。
その場合は、新しく分かった事実を加えて税額をもう一度確認する意味があります。
大切なのは、
「誰が申告したか。」
より、
「申告に使った情報が正しかったか。」
を見ることです。
相続税の見直しをうたう営業には注意したい
相続税を申告した後、
「土地の評価を下げれば税金が戻ってきます。」
「相続税を取り戻せます。」
といった営業を受けることがあります。
実際に払い過ぎているのであれば、
税額を見直すこと自体に問題はありません。
しかし、
「必ず戻る。」
「とにかく土地を安く評価し直せばよい。」
というほど単純ではありません。
土地を低く計算するのであれば、その金額にする理由が必要です。
当初の申告額が適切であれば、見直しても税金は変わりません。
また、税金が返ってきたとしても、
成功報酬などの費用を差し引いた結果、
手元に残る金額がそれほど多くないケースも考えられます。
相続税を見直すときは、
いくら税金が減りそうなのか。
なぜ当初の計算が高かったのか。
その根拠は何か。
依頼する場合はいくら費用がかかるのか。
まで確認することが重要です。
「取り戻せるかもしれない」という言葉だけで判断しないようにしましょう。
まずは当初の申告書を見直す
相続税を払い過ぎているか気になった場合、
最初にすることは新しい節税方法を探すことではありません。
当初の相続税申告書と、その計算に使用した資料を確認します。
特に見たいのは、
土地、自社株、
借入金、大きな預金移動、
申告後に判明した財産や支払い、
といった部分です。
例えば、相続財産のほとんどが預金で、
残高も正しく計算されているのであれば、
大幅な払い過ぎが見つかる可能性は高くないでしょう。
一方、不動産や自社株の割合が大きい相続では、
計算方法や前提となる情報によって財産額が変わる余地があります。
まず、
「相続税をいくら払ったか。」
ではなく、
「どの財産にいくらの金額を付けて申告したのか。」
を確認することが大切です。
5年あるからといって後回しにしない
通常、相続税を多く納めていた場合の見直しは、
原則として申告期限から5年以内に行う必要があります。
5年と聞くと、時間に余裕があるように感じます。
しかし、相続から時間が経つほど、当時の資料を集めにくくなることがあります。
不動産の状況が変わる。
銀行口座を解約する。
会社の担当者が変わる。
相続人が資料を処分する。
このような変化があると、
亡くなった時点の状況を確認するのが難しくなります。
「もしかすると計算が違っていたかもしれない。」
と気付いたのであれば、期限直前まで待つ必要はありません。
当初の資料が残っているうちに確認した方が、正しい判断をしやすくなります。
まとめ
相続税を一度払ったからといって、税額が絶対に変わらないわけではありません。
当初の申告で本来より多く税金を納めていたのであれば、
払い過ぎた分を返してもらえる可能性があります。
確認したいのは、
土地を高く計算していなかったか。
自社株の計算に誤りがなかったか。
差し引ける借入金などを入れ忘れていなかったか。
同じ財産を二重に計算していなかったか。
申告後に決まった財産の分け方によって税額が変わっていないか。
といった点です。
ただし、相続税が高かったという理由だけで返金されるわけではありません。
当初の申告税額が、本来納めるべき税額より多かったことを確認する必要があります。
特に、不動産や自社株など、
金額の計算が複雑な財産を多く相続している場合は、
申告書を一度見直してみる意味があります。
相続税の申告で見るべきなのは、
「いくら払ったか」だけではなく、
「その税額の元になった財産の金額が本当に適切だったか」です。
申告が終わった後でも、計算の前提に間違いが見つかれば、税額を見直せる可能性があります。

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